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出産手当金とは?対象者や支給額、利用する際の注意点をわかりやすく解説

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妊娠し、出産をするために仕事を休んだ女性、またはその家族が安定した生活がおくれるよう支払われるのが出産手当金です。

しかし、残念ながらすべての方が受け取れる手当金ではありません。

また、支給額も人によって異なります。

今回は、出産手当金について支給される人やその金額、支給期間、受け取り時期などをわかりやすく解説しています。

出産手当金を利用する際の注意点も解説しているので、利用を検討している方はぜひ参考にしてください。

※2022年12月時点の情報です

出産手当金とは

赤ちゃんを出産するママが仕事をしている場合、出産をするためには一定期間仕事を休むことになるでしょう。

ママが働いていた間、月に給与を15~30万ほどもらっていたとしたら、それがなくなってしまうと家計にとって大きな痛手になってしまいます。

働けない間、給料を受け取らなかった場合に健康保険から支給され、生活を保障してくれる制度が出産手当金です。

出産手当金のメリット
  • 赤ちゃんを産み育てる間、働けなくなるママにとって経済的な助けとなる
  • 支給期間は、健康保険料、年金保険料、雇用保険料などが免除される
  • 健康保険料、年金保険料、雇用保険料が免除されている間も加入している実績はある

出産手当金は、ママが働けない期間の生活を支えてくれる大切なものです。

ただし、出産手当金を受け取るためには一定の条件をクリアする必要があったり、支給期間や受け取り時期を把握しておいたりと、知っておくべきことがあります。

また、出産手当金と混同されやすいものとして、出産育児一時金が挙げられます。

出産育児一時金は、出産にかかる費用の軽減に役立つものです。

両者の違いは混同されやすい「出産手当金」と「出産育児一時金」は何が違う?で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

出産手当金の対象者は?支給される3つの条件

普段から共働きをしている家庭にとって、ママの収入がなくなることは大きな不安につながります。

そんな不安を解消してくれる「出産手当金」という制度があるのであれば、「活用したい!」と考えるママも多いことでしょう。

これらの条件は1つでもクリアできなければ、支給対象外となってしまいます。

それぞれの条件について詳しく解説していくので、自分が該当するかどうかを確認しましょう。

条件1:勤務先の健康保険に加入している

勤務先の健康保険に加入していれば、正社員・契約社員・アルバイト・パートなどの雇用形態は問いません。

平成28年10月から、特定適用事業所で一定の要件を満たす短時間労働でも健康保険に加入できるようになりました。

【短時間労働者でも健康保険に加入できる条件】
特定適用事業者とは 被保険者の総数が常時500人以上の事業所
一定の要件とは ・週の労働時間が20時間以上 ・雇用期間が1年以上(※令和4年10月から勤務期間2ヶ月以上に改正予定) ・賃金が月88,000円以上 ・学生は不可

退職者・退職予定者も条件を満たせば対象になる

赤ちゃんを出産するために退職した、あるいは退職する予定の方も対象となる可能性があります。

【退職者・退職予定者でも対象となる条件】
条件 内容
継続して1年以上健康保険に加入している 健康保険に、退職の前日まで1日の空白もなく加入しつづけている
退職日が出産手当金の支給期間内にある 支給期間前に退職すると対象外
退職日に出勤していない 退職日当日に労働をせず、収入がないこと

「退職してしまったので、出産手当金の対象にはならない」と思い込んでしまっている人も多いかと思います。

上記を見て、「諦めていたけれど、もしかしたら自分も対象になるかもしれない」と思った方は、受け取れるかどうかを今一度チェックしてみてください。

条件2:妊娠4ヶ月以降を迎えた

妊娠4ヶ月以降とは、週数でいうと妊娠12週(85日)以降です。

妊娠4ヶ月を過ぎたら「出産」と認められるので、妊娠4ヶ月未満での流産や死産は対象外となってしまいます。

妊娠4ヶ月というと、胎児の大きさは10cmほど、体重は40~100g程度。

脳や心臓が発達し始め、小腸などの消化器官ができてくる時期なので、その時期の出産というと死産や流産になる可能性が非常に高いです。

しかし、死産や流産、人工妊娠中絶であっても、妊娠4ヶ月以降であれば給付の対象です。

条件3:出産のために休業している

勤務している会社を出産のために休んでいることが条件ですが、「産前産後休業」として、その間も給与が支払われている方もいるでしょう。

原則としては、給与を受け取っていない場合に出産手当金が支給されますが、もし給与を受け取っていても、給与の日額が出産手当金の日額を下回っていれば、足りない分を支給してもらえます。

ただし、出産手当金の対象期間に出勤して給与を得た日があった場合は、その日は支給対象から除外されます。

出産手当金の対象にならない4つのケース

ママが働けない間の大切なお金として、ぜひ受け取りたい出産手当金ですが、対象とならないケースが4つあります。

各ケースの内容を詳しく解説していきます。

国民健康保険に加入している

自営業やフリーランスとして働き、国民健康保険に加入している方は対象外です。

運営主体が協会けんぽなどで、勤務先を通じて加入するのが健康保険です。

国民健康保険は、市町村が運営しており、自分自身で加入します。

自分が加入している保険が健康保険なのか国民健康保険なのかがわからない人は、自分の保険証を確認してみましょう。

ただ、「会社で保険に加入しているが、それが健康保険ではなく国民健康保険組合のものだ」というケースもあります。

その場合は給付される可能性があるので、確認してみてください。

被扶養者になっている

被扶養者とは、夫など自分以外の健康保険の扶養に入っている人のことです。

この場合、使っている保険証は健康保険のものですが、被保険者本人ではないので出産手当金の対象外となってしまいます。

任意継続で元勤務先の健康保険に加入している

会社を退職したら健康保険も喪失するので、国民健康保険に加入することになるでしょう。

しかし、さまざまな理由から国民健康保険には加入せず、元勤務先の健康保険を任意継続する方もいます。

任意継続は退職後2年間適用できるので、出産のタイミングで任意継続していたら出産手当金の対象外です。

産休中に手当金の日額以上の給与を受け取っている

産前産後休業(産休)の間でも給与が支払われる会社があります。

支払われる給与は会社によって違いますが、休んでいても支払われる給与額が出産手当金を上回っていると、支給対象から外れることを覚えておきましょう。

給与の日額が出産手当金の日額より少なければ、その差額が受け取れます。

産休中に有給消化する人もいるかもしれませんが、有給を使うと給与が支払われるので、その分の出産手当金が受け取れなくなってしまうことには注意してください。

したがって、有給消化は出産手当金の対象にならない時期に行うことをおすすめします。

出産手当金の支給額

「受け取れることはわかったけど、一体いくらぐらいもらえるの?」と疑問に思っている方も多いかと思います。

おおまかにいうと「給与の3分の2」くらいの金額だと考えておくといいでしょう。

「給与といっても、毎月一定額ではない」という方もいるかと思います。

支給額を計算するためには、支給開始前の12ヶ月分の給与を12で割り、1ヶ月の平均給与額を算出することから始めてください。

さらにそれを30日で割ることで、平均日額を求められます。

平均日額の3分の2の金額が出産手当金の日額です。

  • 「支給開始前の12ヶ月分の給与を12で割った1ヶ月の平均給与額」÷30×2/3=出産手当金の日額

受け取れる出産手当金の総額は、出産手当金の日額に、出産のために休んだ日数をかければ求められます。

  • 「出産手当金の日額」×「出産のために休んだ日数」=出産手当金の総額

では、実際に数字を当てはめて計算してみましょう。

  • 25万÷30=8,333円
  • 8,333×2/3=5,583円
    ※小数点第1位を四捨五入

これで出産手当金の日額が5,583円だとわかりました。

対象とされる支給期間をフルで利用すれば、支給期間は98日です。

  • 5,583円×98日=547,134円

この場合では、出産手当金が54万7,134円支給されることがわかりました。

自分の場合での数字に当てはめて算出してみると、実際にどのくらいの出産手当金が支給されるのかがわかるので、その間の生活の様子なども計画しやすくなるでしょう。

出産手当金の支給期間と受け取り時期

次に気になるのが「いつもらえるのか」ということです。

出産手当金の支給について

出産予定日を基準にして「いつからいつまで休んだ期間が対象になるのか」、「いつごろ受け取れるのか」を詳しく解説していきます。

支給期間

出産予定日より42日前から出産後56日目までの期間が支給期間です。

つまり、出産予定日当日に赤ちゃんが産まれた場合の支給期間は98日間です。

出産はなにが起こるかわからないので、かならずしも出産予定日当日に赤ちゃんが産まれるとは限りません。

出産予定日よりも遅れて産まれた場合は、遅れた日数も支給対象です。

出産予定日より5日遅れて産まれた場合の支給期間は103日間。

ちなみに出産した当日は「出産前の期間」に属します。

これは1人の赤ちゃんを出産した場合です。

もしも多胎妊娠、つまり双子や三つ子以上の場合は、出産予定日より98日前から出産後56日目までの期間である154日間となるので間違えないようにしましょう。

受け取り時期

出産手当金は、申請してから1~2ヶ月後に受け取れます。

一般的には産後56日を過ぎてから申請する方がほとんどなので、受け取るのは産後3ヶ月以上経ってからです。

受け取り方法は、指定の口座への一括振込です。

「働けない期間の生活を支えるための出産手当金」ですが、実際には働けない期間に受け取れないので、まずは産前産後休業中の資金は自分で用意しておき、支給後にひっ迫した分を補う流れとなるでしょう。

出産手当金を利用する際の2つの注意点

支給されると生活が助かる出産手当金ですが、利用する際には2つの注意点を知っておく必要があります。

注意点に関する詳しい説明をしていくので、利用するときになって後悔しないようにかならずチェックしてください。

出産手当金には申請期限がある

出産手当金を申請するタイミングは人それぞれだと思いますが、確実に受け取るためには期限内に申請する必要があります。

申請できる期限は「休んだ日ごとに、休んだ日の翌日から2年間」です。

ポイントは、1日ごとに時効が起算される点です。

例えば、11月10日から2月16日まで休んだ場合だと、2年後の11月10日に初日の申請期限の時効となり、最終的に2年後の2月16日に完全に申請期間切れを迎えます。

つまり本来ならば98日間分の出産手当金が受け取れるところですが、2年後の12月10日に申請すると、1ヶ月分の出産手当金は時効を迎えているので、68日間分の金額しか受け取れません。

対象期間分の全額を受け取りたいのであれば、産後56日を過ぎたらできるだけ早く申請することをおすすめします。

申請のタイミングが遅くなればなるほど、申請忘れのリスクも高くなるでしょう。

支給期間中に有休を取得した場合、その日は対象外になる

有給休暇を取得するとその日の給与が発生するため、有給休暇を取得した日は対象外です。

出産手当金は原則、仕事を休んで給与がない日の分を手当金として支給されるものなので、出産手当金の対象期間中に休んだとしても、それが有給休暇だとその日の分の出産手当金は請求できません。

残っている有給休暇を消化する必要がある人は、出産手当金の対象期間外にとることをおすすめします。

出産手当金の申請方法

実際に出産手当金を申請する流れを解説していきます。

  1. 健康保険出産手当金支給申請書を入手する
    産前産後休業に入る前に、健康保険出産手当金支給申請書を入手しておきます。
    申請書は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式サイトでダウンロードできます。
    申請書の入手先:こちら

    協会けんぽの公式サイトでは、申請書をはじめ記入例や貼付台紙などもダウンロードできます。
  2. 出産した病院等で必要事項を記入してもらう
    申請書には「医師・助産師記入欄」があります。
    出産した日などを記載してもらうので、出産後に記入してもらいましょう。
  3. 必要事項を記入して会社に提出する
    保険者の情報や振り込み先の口座情報などは、自分で記入する必要があります。
    漏れや間違いがないように記入して、会社に提出しましょう。
    事業主が記入する欄を会社側が記入してくれたのち、そのまま申請してもらえるケースが多いです。

添付が必要な書類も一緒に準備しておきましょう。

添付書類
  • 医師または助産師の意見書
  • 勤務状況や賃金に関しての記載内容が多い場合は、当該ページをコピーして添付書類にする
  • 事業主の証明
【条件に該当する場合に必要な添付書類】
条件 添付書類
被保険者が死亡した場合 (除籍)戸籍謄本または戸籍抄本
被保険者のマイナンバーを記載した場合 本人確認書類
マイナンバーカードを持っている マイナンバーカードを持っていない
マイナンバーカードの表面・裏面ともにコピーして添付
  1. 番号確認書類のコピー
(個人番号通知カード・マイナンバーの記載がある住民票・マイナンバーの記載がある住民票記載事項証明書のいずれか)
  1. 身元確認書類のコピー
(運転免許証・パスポート・その他公署が発行する写真つき身分証明書のいずれか) これらの①+②を添付台紙に貼り付けて添付
※場合によっては上記以外の添付書類が必要となることもある

混同されやすい「出産手当金」と「出産育児一時金」は何が違う?

赤ちゃんを産む際にもらえるお金として、「出産手当金」のほかに「出産育児一時金」があります。

同じ出産時にもらえるものなので混同してしまう人も多いかと思いますが、この2つは違うものなので注意しましょう。

【出産手当金と出産育児一時金の違い】
出産手当金 出産育児一時金
給付の目的 出産によって働けない時期の生活保障 出産にかかる費用の軽減
申請先 健康保険組合・協会けんぽ・共済組合など
  • 健康保険組合・協会けんぽ・共済組合など
  • 国民健康保険
  • 扶養家族の健康保険
給付される金額 妊婦本人の給与額や出産日によって異なる 胎児1人あたり42万円 (双子の場合は84万円) ※産科医療保障制度に加入していない医療機関での出産、または妊娠22週未満の出産・死産の場合は40万4,000円

赤ちゃんを出産するためには、大きな額の出産費用が必要です。

出産手当金は、働けない期間の生活保障を目的とするもの。

申請するには多くの条件がありますが、出産育児一時金はほとんどの妊婦に支給されます。

ただ、出産育児一時金は出産した病院等に直接支払われるので、出産したママが42万円を自分の目で見ることはありません。

出産手当金に関するQ&A

出産手当金について、多くの人が知りたいことをQ&A方式でまとめました。

この章を読むだけでも出産手当金について詳しくわかるので、ぜひチェックしてください。

出産手当金の支給条件は?

出産手当金を支給してもらうためには以下の3つの条件をクリアしなければなりません。

1つでもクリアできない条件があれば、支給対象外となってしまいます。

条件については、前述している出産手当金の対象者は?支給される3つの条件にて詳しく解説しています。

詳細を知りたい方は、そちらをチェックしてください。

出産手当金の対象にならないケースは?

出産手当金を受け取りたくても、残念ながら対象にならないケースが4つあります。

1つでも当てはまっている項目があれば、出産手当金の対象外ということです。

出産手当金の対象にならないケースに関しては、前述している出産手当金の対象にならない4つのケースにて詳しく解説しています。

それぞれのケースについて、そのあとの章でさらに詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。

出産手当金の支給額は?

出産手当金の支給額は、支給される人によって異なります。

おおまかには「給与の3分の2」だと考えておけばいいでしょう。

支給期間の日数によっても異なるので、より正確な金額が知りたければ以下の計算式で算出してみましょう。

  • 「支給開始前の12ヶ月分の給与を12で割った1ヶ月の平均給与額」÷30×2/3=出産手当金の日額
  • 「出産手当金の日額」×「出産のために休んだ日数」=出産手当金の総額

支給額に関しては、前述している出産手当金の支給額で詳しく解説しているので、自分がもらえる支給額を知りたい方はそちらもチェックしてください。

出産手当金の支給期間は?

出産手当金の支給期間は、「いつからいつまで休んだ期間が対象になるか?」ということです。

支給期間は出産予定日より42日前から出産後56日目までの期間です。

出産日当日に赤ちゃんが産まれたら98日、出産予定日よりも遅く産まれたら、遅れた日数分だけ加算されます。

逆に出産予定日よりも早く産まれたら、早まった日数分だけ減算されます。

支給期間に関しては、前述している支給期間で詳しく解説しているので、そちらもチェックしてください。

出産手当金の受け取り時期は?

出産手当金の受け取り時期は、申請してから1~2ヶ月後です。

申請のタイミングは人それぞれだと思いますが、多くの人は産後56日経過したらすぐに申請しています。

つまり、出産手当金は産後3ヶ月以上経過したころが受け取り時期になるでしょう。

ちなみに申請には「休んだ日の翌日から2年間」という期限があるので注意してください。

出産手当金の受け取り時期に関しては、前述している受け取り時期で詳しく解説しています。

また、申請の期限に関しては、出産手当金には申請期限があるで詳しく解説しているので、全額受け取りたい方はどちらの章もチェックしておきましょう。

まとめ

出産手当金は、出産にともなって会社を休まなくてはならないママが、その間の生活を支えるために受け取る大切なお金です。

ただし、すべての妊婦さんが受け取れるわけではなく、対象となるには条件をクリアしなければなりません。

会社に勤務していて健康保険に加入しているのであれば、多くの妊婦さんが対象ですが、なかには対象外となってしまうケースもあるので注意が必要です。

事前にどのくらいの金額をもらえるのかを計算しておくと、その後の生活の目安にも活かせます。

現在会社に勤めている、または退職したが1年以上は健康保険に加入していた妊娠・出産の予定がある人は、自分やその家族の生活を守るためにぜひ出産手当金を活用してください。

参考資料:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大 / 健康保険給付の申請期限について / 全国健康保険協会

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